「真実は民衆の敵だ」

「真実は民衆の敵だ。真実ほど見るにたえぬものはないんだから。」(カート・ヴォネガット・ジュニア『猫のゆりかご』より)

いやぁ、今日は(最近は)、えらくいろんなことがあったよ。
しかし、つくづく思う、人間という生き物は、実に滑稽だ。
さて、その滑稽さについて、少しお話してみましょうか。
今日は、とある女性とランチとお茶をしてきました。
といっても、残念ながら相手は件の彼女ではない。
いや、待て、言いたいことは分かるが、僕の言い分も聞きたまえ。
まず、意中の女性がいるにも関わらず他の女性と二人で出かけることの是非については、僕は、親しい間柄であり且つお互いに友人以外の何者でもないという認識を持っているのならば問題無い、という見解だ。
しかし、今回の話は相手から持ちかけてきたのだが、この女性と僕とは特別に親しいというわけではない。よって、最初は、この子と二人で出かけるのは好ましくないと判断し、断りを入れた。
けれども、相手は是非にと求めてくる。そこで、自信過剰な僕は、(ひょっとしてこの子は僕のこと好きなんじゃ?困るなぁ。他に好きな女性がいるし。じゃあ、今回一緒に食事して、その時にさりげなく好きな女性がいることを伝えよう。なるべく傷つけないように上手くやらねば・・・。)などと考え、今回の会食に臨んだわけだ。僕の事情、お分かりいただけたかな?
(ちなみに、この女性は僕の好みのタイプではない。背が高すぎる。)
しかし、今思い返すと、これは全く愚かな勘違いであった。
この前振りでオチを読み切った人は、素晴らしい勘をお持ちだと思う。

この会食での相手の目的は、僕の気を引くことなのではなく・・・


カルト宗教の勧誘であった。


まいったね、どうも。
心配しないでくれ。僕は全く感化されていないし、怪しげなグッズを売りつけられてもいないし、新たに個人情報を引き出されたこともない。
カルト宗教は僕の最も嫌悪するものの一つだ。
そもそも、僕は、カルトであろうがなかろうが、宗教が好きではない。宗教音楽や建築には関心があるがね。僕は、神も仏も信じないし、それに、宗教の教え、というやつが好きではない。僕は、「あれしろ、これするな」と人に言われるのが大嫌いだからね。
お茶に入ったカフェで、彼女はその宗教の良さを必死でアピールした。
(ちなみに、この女性は僕の好みのタイプではない。僕は小柄な女性が好みだ。)
様々な事例を引きつつ、延々と話していたが、要約すると、「この宗教に入信すれば、全てがうまくいき、入信しなければ、滅びを迎える」ということだ。
このカルトは、仏教系のものだったのだが、彼女に言わせると、アメリカの金融危機は、この宗教を信じていないことに起因しているらしい。それならば、僕など勧誘せずに、オバマさんでも勧誘すれば良い。
彼女が熱弁をふるっている間、僕は、「はー。」とか「へー。」とか「ほー。」とか、実に適当な相づちを打つことに終始した。当然、カルト嫌いな僕としては(そうでなくても正常な判断のできる人間なら)、ツッコミどころ満載の話ではあったのだけど、こちらから異論を挟むことはしなかった。
このような場合、カルトを嫌悪していて、さらに自らの知性に自信のある人は、ロジカルな対話によって相手を論破しようとするケースが多いのではないかと思う。しかし、これは危険な行為ではないか。
カルト信者と非カルト信者が議論になった場合、論点はただ一つのことばかりに終始するのではなく、五つも六つも論点が出てくると思う。そうなった時、非カルト信者がその全てで勝利できるとは限らない。非カルト信者の論拠が、多くの矛盾を抱える現代社会の一般的常識であるならば、カルトの掲げる「理想の世の中」に対して不利な部分があると思う。
仮に、知性に自信のある非カルト信者がカルト信者と論戦を行い、4勝1敗だったとしよう。この場合、知性に自信のあった非カルト信者にとって、4勝したことよりも、1敗してしまったことが重大なことになるのではないか。そして、カルトは、その1敗につけ込み、全体を切り崩してくる。自分に自信のある人間の方がかえってカルトに洗脳されやすいと言われるのには、このあたりに落とし穴があると僕は思う。
よって、僕は、適当に相づちを打って(その間、僕はカフェのマスターを主人公にした小説について考えていた)最後まで話を聞いた後、「なるほど。この宗教があなたにとっていかに大事かがよくわかった。しかし、僕の考えとは全く違うし、僕の考えが変わることもありえない。だから、この話題はこれで終わりだ。」と言って、今日の会食を切り上げた。
しかし、ずいぶんと熱心なことだ。この熱心な勧誘は、彼女なりの善意から来るものなのか、それとも、多くのカルトにある勧誘ノルマがあるのか、あるいは、彼女、男好きのしそうなタイプだ、ひょっとすると対男性勧誘要員なのかもしれない。ま、なんでもいいか。
(ちなみに、この女性は僕の好みのタイプではない。女性の身長は153cmをベストとして±3cm以内が望ましい。)
他にも思ったことは色々あるが、ここまででかなりの字数を使ってしまった。今日はここまでにしよう。