宮部みゆきブレイブ・ストーリー」。

小学五年生の亘は、成績はそこそこで、テレビゲームが好きな男の子。大きな団地に住み、ともに新設校に通う親友のカッちゃんがいる。街では、建設途中のビルに幽霊が出るという噂が広がっていた。そんなある日、帰宅した亘に、父は「この家を出てゆく」という意外な言葉をぶつける。不意に持ち上がった両親の離婚話。これまでの平穏な毎日を取り戻すべく、亘はビルの扉から、広大な異世界―幻界へと旅立った!

僕は宮部みゆきさんがすごく好きで、かなり読んでるんですが、この作品は出版されてからもずっと読んでなかったんです。と言うのも、僕が思う宮部さんの魅力は、ストーリーの面白さ、構成力、きれいな文章、登場人物への温かいまなざし、まぁ、いろいろあるんですが、特に好きなことに、人間の内面や現代社会への鋭い視点、というのがあるんですね。それで、ファンタジーである「ブレイブ・ストーリー」はそういうのとはちょっと違うだろうな、と思って敬遠していたわけです。
でも、今回映画化で話題になったこともあって読んでみたんだけど、そういう自分の考えが違っていたことが分かりました。この作品は、宮部みゆきさんらしい魅力にあふれた名作です。
これはただのハラハラドキドキの冒険物語ではなく、物語の中には人間の内面や現代社会への鋭い視点、というものが明確にある。今回はネタバレ無しで書くつもりなので具体的には書かないけど、ともかく、この作品がファンタジーであることは、目的である以上に手段なんだと思うんです。ファンタジーという手段を用いることで象徴的にこのことを描いているんですよ。そういった点で他のファンタジーとは一味違う。お薦め。
ところで、この物語の世界観は、「指輪物語」とかの物語よりは「ドラゴンクエスト」などゲームに近い印象ですね。これは作者のゲーム好きを大きく反映しているでしょう。宮部みゆきさんは大のゲーム好き。特に好きなのは「幻想水滸伝」シリーズ。「大極宮通信」という小冊子のとある号で宮部さんはすべてのスペースを「幻想水滸伝」の魅力を語ることに費やし、「待ててねゲオルグさま〜♪♪」と、読者ではなくゲームのキャラクターへの呼びかけを行っています。以上余談。
さて、映画化された方も見てきたので、今度はそちらの感想も書きますね。
ブレイブ・ストーリー (上) (角川文庫)
ブレイブ・ストーリー (中) (角川文庫)
ブレイブ・ストーリー (下) (角川文庫)