「β・ブロッカー」または「考えたり感じたりできる物質」

やぁ、さすがに寒くなってきたね。
前振りだけしておいて落ちをつけないのは決まりが悪いので、簡単に報告を。
先日、件のステーキハウスに行ってきた。
大変楽しんでもらえた、と思う。
僕の話に、あれほど楽しそうに且つ上品に笑ってくれる女性は他にいないだろうな。僕の話は基本的に女性受けがイマイチだからね。笑
僕が楽しかったのは、まぁ、言うまでもないことか。
しかし、緊張したね。僕はいつもそうなんだ。いざ二人で出かけると、楽しいのが勝って緊張など全く感じないが、出かける前はかなりナーバスになる。相手の家のチャイムを鳴らす時は、指が震えるからな。苦笑
さて、今日は、この緊張から来る震えについて少し話したい。惚気話ばかりしてると顰蹙を買いそうだしね。笑
僕にも経験があるが、緊張による震えは、人前で演奏を行う時には大きな障害となる。この克服にはいくつかアプローチの方法があるが、今日は医学的アプローチの話をしたい。
まずは、この件に関しては僕は専門家ではないことは断っておく。以下の記事は、僕が以前大学で受講していた、現役の医師による授業で得た資料が情報源である。従って、情報源としては、信頼はおけると思うが、それでも、実践においては、専門家への相談など、精査を行った上で、自分自身の責任において行ってもらいたい。

そもそも、緊張による震えは、副腎から放出されるアドレナリンというホルモンに起因している。
よって、アドレナリンの効果を遮断することにより、震えを克服することができる。
そのための薬が、β・ブロッカー(β・アドレナリン作動性神経受容体拮抗薬)である。
β・ブロッカーにより、不安による身体的影響は取り払われる。
「不安によって演奏に悪影響が出ている場合、薬剤がそのマイナス影響を取り払ってくれる。こうした環境下においては、演奏内容は改善する。この点を裏付ける科学的研究は数多く存在する」。(協同医書出版社『音楽家の手臨床ガイド』より)
β・ブロッカーの使用は、通常の(低)用量では、演奏への有害作用は無いが、過度に使用すると、指の動きが遅くなることがある。また、喘息を引き起こす恐れがあるので、喘息を抱える人は使用ができない。そして、薬品である以上、特定の場合にのみ服用されるべきであり、毎日服用すべきではない。
ちなみに、β・ブロッカーは鎮静剤とは異なる。鎮静剤の類は、より良い演奏のための使用において、「短期使用に関しては、その正当性にしばしば疑問の余地があり、長期使用に及んでは弁護の余地がどこにも無い」。(同上)
参考文献:協同医書出版社『音楽家の手臨床ガイド』

繰り返しになるが、僕はこの分野の専門家ではない。よって、この記事のみを根拠としてのβ・ブロッカーの使用はやめてほしい。使用するにしても、医師や薬剤師といった専門家への相談をお薦めする。
また、僕は、この記事を、β・ブロッカーの存在を知らせるために書いたのであって、β・ブロッカーを勧めるために書いたのではない。知っているけど使わない、と、知らないので使えない、には違いがあるからね。
さて、これは緊張による震えというフィジカルな問題を体内の反応を抑制によって解決する、という話だが、そもそも、緊張する、不安を感じる、といったメンタルな問題もまた、脳内で起こる、なんらかの物質の反応の一つなのだろう。
これも、薬剤に依ればある程度コントロール可能なのだろうが、自分のみの力でコントロールするのは、手の震えと同様に難しい。僕たちは、喜ぼうと思って喜ぶわけではなく、怒ろうと思って怒るわけではなく、恋をしようと思って恋をするわけではない。
つまり、僕たちは、自分の体内の物質の反応に支配されている、と考えることもできる。
いったい、自分という人間の、どこからどこまでが自分なのだろう?心とは何か?人間とは何か?なぜ、巻き寿司に納豆を入れるのか?・・・この種の疑問は尽きない。

「わたしは、考えたり感じたりできる物質を頭の中に持っていることが大きなまちがいだ、と思うことがときおりある。その物質のほうでも、そうこぼしている。しかし、それと同じ意味で、岩石や山山や月はすこし無感動すぎるという非難も成り立つかもしれない」
カート・ヴォネガット・ジュニアタイタンの妖女』より)