衝撃的作品でした、東野圭吾幻夜」。

1995年1月17日午前5時46分に発生した「兵庫県南部地震」が、この地方に住む人々の人生を大きく変容させた。死者6,433名、行方不明者3名、負傷者43,792名という、未曾有の大惨事を生んだこの災害は、後に、「阪神・淡路大震災」と称される事となる。
その前夜、水原雅也の家では、彼の父親である幸夫の通夜が営まれていた。借金を抱えた挙句の自殺だった。
眠れない夜を過ごした雅也に、突然の奇禍が訪れる。轟音・激震・破裂音の果てに、雅也の周囲では、幾つもの瓦礫の山が築かれた。「兵庫県南部地震」の発生であった。
水原家の母屋に寝ていた叔父の俊郎は、梁の下敷きになってぴくりとも動かない。呆然となる雅也だが、叔父の懐から飛び出している書類、父親が残した借用書に気付き、奪い取った。ところが、俊郎は絶命していなかった。動揺した雅也は叔父の頭部を殴打し、殺害してしまう。
「もうここには用はない」と、その場を去ろうとした雅也であったが、彼の目の前には若い女が立っていた。
大震災の混乱の中で出会った男女の、運命の変遷を描く長編サスペンス。

とてもおそろしい話ですが、先が気になってかなりハイペースで読みました。まず、作品のリアリティーがすごい。バブルや阪神大震災といった時代を反映した作風もいいですね。
それから、東野圭吾さんのファンの間では、この作品は「白夜行」の続編か?ということが話題になりますね。というのも、この作品は「白夜行」と共通するところが多くあるけど「続編」と明言はされてないし、作品中にも続編と言える決定的な記述が無いんです。
ただ、個人的には「幻夜」は「白夜行」の続編だと思います。ネタバレになるので詳細は言えませんが、そう考えたほうが辻褄が合うし、なにより文章のスタイルがそっくりです。「白夜行」の感想で書きましたが(http://d.hatena.ne.jp/kinnosuke/20060314)、「白夜行」でも「幻夜」でも中心人物の内面を描いてないんです。読者が人物の内面を想像して、物語が完結するんですね。
この続編かどうかの話では東野圭吾さんは「どちらから読んでもらってもいいのですが、両方読めば両方読んだなりの面白さがあると思います。ただ『白夜行』の“続編”にはしたくなかったので、『幻夜』を書くとき、そこは苦労しました。ズバリ書いてしまうのは無粋。両方を読んだ人同士でいろいろ想像して盛り上がってくれればいいな、と思っています」と言っています。この続編問題に関しても読者の想像力に委ねる、ということなんでしょう。
ともかく、「白夜行」の「幻夜」も非常にお薦めできる作品。

幻夜
白夜行 (集英社文庫)